埼玉熊谷相続遺言相談センター
代表者 内田三好行政書士
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相続遺言Q&A

遺言では、どんなことを決めてもいいのですか。

遺言で決められる事項は、下記のように認知や遺産分割方法の指定など、 法律で定められた事項に限定されています。したがって、それ以外の事項を記載しても法的な効力はありません。
○ 相続に関する遺言事項
・ 相続人の廃除・廃除の取消し
・ 相続分の指定・指定の委託
・ 遺産分割方法の指定・指定の委託
・ 遺産分割の禁止
・ 特別受益の持戻しの免除
・ 相続人間の担保責任の定め
○ 遺産の処分に関する遺言事項
・ 遺贈
・ 遺留分侵害額の負担割合の指定
・ 一般財団法人の設立
・ 信託の設定
○ 遺言の執行に関する遺言事項
・ 遺言執行者の指定・指定の委託
○ 身分に関する遺言事項
・ 子の認知
・ 未成年後見人・未成年後見監督人の指定
○ その他の遺言事項
・ 祭祀主宰者の指定
・ 生命保険金の受取人の変更
・ 遺言の撤回

遺言書を作成するタイミングはいつですか。

定年退職前後の60歳~65歳で終活を始め、遺言書を作成する方が多いようです。ただし、認知症などで判断能力が失われてしまうと作成できませんので、早めに作成することをお勧めします。

遺言書を作成しましたが、他に何かしておいた方がよいことがありますか。

遺言の対象は、遺言者の死亡時の財産になります。遺言書作成後、遺言者の死亡時までの間の財産管理が適切になされなければ、遺言書作成が無意味になります。 その為、遺言者が死亡するまでの間の財産管理について別の方法を考える必要があります。例えば、遺言者が、ご自分の判断能力が低下した場合に備えて、将来任意 後見人になる人に財産の管理を事前に頼んでおく契約(任意後見契約)が考えられます。

無理やり書かされた遺言でも有効ですか。

有効ではありません。遺言は書いた人の真意によらねばなりません。したがって、無理強いにより書かされた遺言は無効です。ただし、その無理やり書かされたものであることの立証は困難です。そこで、すみやかに遺言書を廃棄することをお勧めします。また、無理やり書かせた者が相続人や受遺者であった場合、その者は相続により財産をもらう権利を失うことになります。
※ 受遺者とは、遺言によって無償で財産を受ける者をいいます。

遺言書が偽造されたのではないかと疑っているのですが、この場合、どうしたらいいでしょうか。

遺言書が偽造された可能性があるとすれば、裁判所に「遺言無効確認の訴え」という裁判を起こして、遺言が無効であることを確認してもらう必要があります。なお、遺言が偽造された疑いがある場合でも、裁判では「遺言が無効である」ことを確認してもらえば十分であり、偽造であることまでを証明する必要はありません。また、多くの場合、裁判所も「遺言が無効である」ことを確認すれば十分と考え、無効であることが明らかであれば、あえて偽造か否かまでは判断しないこともあります。

夫婦2人が、共同で遺言書を書いても構いませんか。

2人以上の者によって、同一用紙に共同で書かれた遺言は無効です。「共同遺言の禁止」と呼ばれています。例えば、一つの遺言書の中に、夫婦どちらが先に死んでも先に死んだ方がお互いの財産を譲る、という遺言をしても無効になります。連名共同の遺言を認めると、他方の遺言者の意思が制約を受け、遺言者の自由な意思をおかす恐れがあるからです。

私が亡くなったら、住んでいる家を同居している長男に譲ろうと思っています。しかし、妻が生きている間は長男に妻の生活の面倒を見てもらう必要があります。この場合、どうすればよいのでしょうか。

自分の死後は家を贈与するので妻の生存中は同居して扶養してほしい、という希望を実現する方法として、相手方との合意により行う「負担付死因贈与」、遺言により行う「負担付遺贈」があります。
① 負担付死因贈与
・贈与者の死亡によって効力を生ずる贈与を「死因贈与」といいます。受贈者が対価に当らない程度の義務を負担する死因贈与を「負担付死因贈与」といいます。
「負担付死因贈与」により、自身の死亡を条件に無償で物を与えるとともに相手方に一定の負担を課すことができます。負担の内容としては、「生存中は同居して扶養する」などが考えられます。
・「負担付死因贈与」の成立には、贈与者と受贈者の合意が必要です。受贈者が財産を受け取ったのに負担を履行しない場合、贈与者は、相当な期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないとき、「負担付死因贈与」を解除できます。負担の全部に類する程度の履行がなされた場合、やむをえないと認められる特段の事情がない限り、贈与者は「負担付死因贈与」を撤回することはできません。
・「負担付死因贈与」は書面がなくても成立しますが、後日のトラブルを防止するためにも契約の内容を書面にしておくべきです。② 負担付遺贈
・遺言という一方的な意思表示によって財産を他人に無償で与えることを「遺贈」といいます。受遺者が対価に当らない程度の義務を負担する遺贈を「負担付遺贈」といいます。「負担付遺贈」は、財産を与える人の死亡により効力を生ずる点や、相手方に負担を課す点で、「負担付死因贈与」と同様といえます。
・「負担付遺贈」は、民法で定められた遺言の方式で行う必要があります。受遺者は、遺言者が亡くなり、自己が遺贈を受けることを知ってから3ヶ月以内であれば、「負担付遺贈」を放棄することができます。受遺者が財産を受け取ったのに負担を履行しない場合、相続人は、相当な期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないとき、「負担付遺贈」に係る遺言の取消しを裁判所に請求することができます。
・「負担付遺贈」は、遺言という一方的な意思表示によって行われますから、遺言者と受遺者との合意は必要ありません。しかし、受遺者は「負担付遺贈」の放棄ができますから、遺言者と受遺者は事前に話し合って合意をしておくべきです。
③・相手方に負担を確実に実行してほしい場合は「負担付贈与」、後に撤回が必要となるかもしれない場合は「負担付遺贈」が優れているといえます。
・「負担付死因贈与」、「負担付遺贈」のいずれも、財産を与える人が亡くなった後に内容を確実に実行してもらえるように、信頼できる人を「執行者」と指定しておくのがよいでしょう。
・なお、「負担付死因贈与」、「負担付遺贈」のいずれによっても、「遺留分」を侵害することはできません。この点について、内容を決める際に考慮しておく必要があります。

父の遺言書には、「長男に全財産を遺贈するが、その代わりに母に生活費として月3万円を支払ってくれ」と記載してありました。ところが、長男は、遺産だけ独り占めして、母親へ支払いをしません。どうしたらよいでしょうか。

財産を遺贈するに当たって、遺贈を受けるものに対して、一定の義務を負わせることができます。これを「負担付遺贈」といいます。この場合、遺贈を受ける側も、遺贈を承認するか放棄するか選択することができます。
遺贈を承認したにもかかわらず、義務を履行しない場合には、相続人は、相当の期間を定めて履行の催告を行って、それでも履行がない場合は、その負担付遺贈にかかる遺言の取消しを家庭裁判所に対して請求することが できます。本問でも、正に義務を履行しない場合ですので、上記の手続きを取ることになるでしょう。

昨年、すべての財産を「長男に相続させる」という内容の遺言書を作成したのですが、先日、長男が亡くなってしまいました。遺言書を作成し直す必要がありますか。それとも、この遺言書のままで、長男の代わりに長男の子供たち(孫)が相続できるのでしょうか。

遺言書を作成し直す必要があります。甲が「乙に相続させる」という内容 の遺言を作成したが、相続開始時(甲が亡くなったとき)に既に乙が亡くなっていたとき、乙の子供が代襲相続するのか、それともその遺言は無効になるのかについて争いがありました。この点について、最高裁判例は、「遺言者が甲の代襲相続人等に遺産を相続させる意思を有していたとみるべき特段の事情がない限り、遺言は効力を生じない」という立場をとりました。したがって、長男が亡くなった時点で、遺言書を改めて作成する必要があります。

遺言をしたいのですが、自分の死後、遺言書どおりに家族が財産を分け合ってくれるか心配です。何かいい方法がありますか。

遺言で遺言執行者を指定しておくとよいでしょう。遺言執行者は、遺言の内容を実現させる者です。したがって、遺言執行者が遺言の内容となっている相続財産の分配に関する手続きを行ってくれます。

私が亡くなったら、相続人は3人の子供です。長男にすべての財産を相続させる、との遺言をしようと思っていますが、このように遺留分を侵害する遺言をしたいときには、どうすればよいでしょうか。
※ 遺留分とは、一定の相続人に最低限残しておかなければならないと法律上定められている遺産の範囲のことです。

このような遺言はトラブルになる恐れがあるので、注意が必要です。本問のような場合には、遺留分を侵害される他の2人の相続人に、相続開始前に、家庭裁判所の許可を得て遺留分の放棄をしてもらうようにします。また、法的拘束力はありませんが、遺言書に遺言者の希望として、遺留分侵害額請求をしないことを付記しておくと、事実上の効果はあります。

父が兄に遺言で全財産を相続させました。相続人は私と兄だけです。相続 財産は、資産が1億円、債務が6,000万円です。この場合、①債務はどうなるのでしょうか。②私には遺留分があると思いますが、遺留分侵害額はいくらでしょうか。

① 債務について
債権者は、あなたに対して、3,000万円を請求できます。しかし、お兄さんは、6,000万円全額を、債権者に支払わなければなりません。判例によれば、相続人のうちの1人に対して財産全部を相続させる旨の遺言がある場合、特段の事情のない限り、当該相続人に相続債務もすべて相続させる旨の意思が表示されたものと解釈すべきである、としています。したがって、お兄さんが6,000万円全額を支払うべきですが、これはあくまで相続人間の振り分けの問題です。遺言は債権者の関与なしに作成されていますので、債権者に対し遺言の効力を主張できません。債権者は、あなたに、お父さんの債務6,000万円の法定相続分すなわち2分の1である3,000万円を請求してきます。もし、あなたが3,000万円を支払った場合には、あなたは3,000万円をお兄さんに求償すること(お兄さんの代わりに債権者に支払ったぞ、と言って、その分を取り立てること)ができます。② 遺留分について
判例は、遺留分侵害額は、資産から債務を引いた差額を基準にした金額である、としています。本問の場合、資産1億円と債務6,000万円はお兄さんが相続することになります。あなたは遺留分を侵害されたことになりますが、その侵害額は、資産1億円から債務6,000万円を引いた差額4,000万円の4分の1(2分の1×2分の1)である1,000万円になるのです。

内容証明郵便で遺留分侵害額請求をしましたが、相手からは一向に返事がありません。どうしたらよいでしょうか。

相手から返事がないのであれば、裁判所での解決を求める必要があります。
遺留分に関する事件は「調停前置主義」といって、裁判を提起する前に、家庭裁判所での調停で解決できないか試みる必要があります。まず、調停 を提起し、裁判所で話し合いをしても解決ができなかった場合には、訴訟を提起することになります。

公正証書遺言をしたいのですが、入院中のため、公証役場へ行くことができません。この場合、公正証書遺言はできないのでしょうか。

この場合でも、公正証書遺言はできます。公証人が、病室まで出張してくださいます。お身体がご不自由でご自宅から出られない方、老人ホーム入所者等、公証役場に出向くことができない方には、公証人が、ご自宅や老人ホーム等へ出張してくださります。

遺言は撤回できますか。

遺言者は、いつでも、原因のいかんを問わず、遺言の方式に従い、遺言の全部または一部を撤回できます。なお、同じ遺言の方式に従って撤回する 必要はありません。例えば、公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回することができます。

先の遺言書とは別の、作成日付の新しい遺言書が出てきました。しかし、 遺言内容は前の遺言とは全く異なり矛盾しているのです。どうなるのでし ょうか。

・ 前に行った遺言に抵触する内容の遺言書を作れば、前の遺言は取り消されたことになります。
・ もっとも、法律上有効な遺言書が2通存在したとしても、遺言書の内容が両立するものであれば各遺言書の内容において矛盾抵触はなく、各遺言書はすべてそのとおり効力が発生することとなります。
・ しかし、本問のように遺言書の内容が矛盾抵触している場合は、新しいものほど遺言者の最終的な意思と評価して、その事項については新しい遺言書の方が優先することになります。つまり、その範囲では前の遺言書は効力が生じないこととなるのです。

父の遺言書には、ある不動産を、長男である私に相続させるとの記載がありましたが、その不動産はすでに生前に売却されていました。私の権利は どうなるのでしょうか。

故人が遺言の内容と違う売却処分をした場合には、その遺言は取り消されたものとして扱うことになります。したがって、あなたは不動産に対して権利を主張することはできません。

死亡した父の遺言書を見つけたのですが、どうすればよいですか。

遺言書を家庭裁判所に提出して、「検認」手続きを受けてください。検認は、遺言者の遺言であることを確認するための一種の証拠保全手続きです。したがって、検認手続きを経たからといって、遺言の内容が正しいと判断されるものではありません。

亡き父が公正証書遺言を残したらしいのですが、見つかりません。遺言があるかどうかを調べることができますか。

できます。平成元年以降に作成された公正証書遺言であれば、公正証書遺言を作成した公証役場名、公証人名、遺言者名、作成年月日等を全国のデータから検索することができます。亡くなった方(父)の死亡の記載がある除籍謄本等、相続人(子供)であることが分かる戸籍謄本、本人証明となる運転免許証等を持参して、公証役場(どこでも可)に行って調査を依頼します。

自筆証書遺言を法務局に預けた場合でも、公正証書遺言のように、遺言者の死後すぐに遺言の執行(不動産の名義変更や金融機関での手続き)ができますか。

そうではありません。公正証書遺言の場合と異なり、「遺言書情報証明書」を法務局に申請する必要があります。遺言書情報証明書の申請には、遺言者の出生から死亡までの戸籍謄本、相続人全員の戸籍謄本・住民票が必要となります(なお、相続人全員の住所の記載がある法定相続情報一覧図を添付すれば、これらの書類は不要となります)。
同じ自筆証書遺言でも、法務局保管制度利用の場合は、家庭裁判所での「検認」手続きが不要となるので一見良い制度にも思えますが、遺族の立場になると負担がかかります。やはり、公正証書遺言にはかないません。

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