遺言の撤回

(1)明示の撤回と撤回の擬制

  • 遺言者の最終意思を尊重するため、遺言者は、遺言を自由に撤回できます。
  • この遺言の撤回には、遺言者の撤回行為によるもの(明示の撤回)と、一定の事実があった場合は、遺言者の真意を問わず、撤回があったものとみなされるもの(撤回の擬制)があります。

    • ①明示の撤回
      遺言者は、遺言が成立した後、遺言者の生存中であればいつでも、原因のいかんを問わず、遺言の方式に従い、遺言の全部または一部を撤回できます。
      • ⅰ 撤回の方式
        遺言の方式に従います。なお、同じ遺言の方式に従って撤回する必要はありません。例えば、公正証書遺言を自筆証書遺言で撤回できます。
      • ⅱ 撤回権の放棄

        撤回権は放棄できません。したがって、遺言者が、受遺者と遺言を撤回しないという契約をしても、その契約は無効です。
    • ②撤回の擬制
      遺言者が、次の場合の行為をすれば、遺言を撤回する意思があるものと推定されるため、撤回が擬制されます。
      • ⅰ 前の遺言と後の遺言とが抵触する場合
        例えば、「Aに全財産を与える」と遺言した後で、「Bに全財産のうち甲建物を与える」と遺言した場合です。この場合には、抵触する部分について、後の遺言で、前の遺言を撤回したものとみなされます。
      • ⅱ 遺言と遺言後の生前処分その他の法律行為とが抵触する場合
        例えば、「Aに全財産を与える」と遺言した後に、土地を第三者に売却したときは、その遺言が、後の売却と抵触する限度で、撤回したものとみなされます。
      • ⅲ 遺言者が、故意に遺言書や遺贈の目的物を破棄した場合
        破棄した部分は、遺言を撤回したものとみなされます。なお、残部については遺言を撤回したものとはみなされず、その効力が発生します。
        遺言書の文面全体に故意に斜線を引くことは、遺言全ての効力を失わせる意思の表れで、撤回したものとみなされます。

 

 

(2) 撤回された遺言の効力

  • 原則として、撤回または撤回が擬制された遺言は、その撤回行為が撤回され、取り消され、または効力を生じなくなるに至ったときであっても、その効力を回復しません。
  • 例えば、第1遺言を第2遺言で撤回した場合に、第2遺言を第3遺言で撤回、つまり撤回行為をさらに撤回しても、第1遺言は復活しないのです。なぜなら、撤回した(または撤回が擬制された)遺言を復活させたいのであれば、別の遺言を改めて作るべきだからです。