遺産分割協議に際して調査すべき事項は、大きく分けて、
(1)遺言の存在の調査
(2)被相続人の身分関係の調査(相続人の調査)
(3)相続財産の調査
(4)特別受益、寄与分の調査
などがあります。
(1)遺言の存在の調査
遺言にはいろいろな種類がありますが、相続人において調査・検索が可能なのは、公正証書遺言です。公正証書遺言については、日本公証人連合会において遺言検索制度が運用されていますので、平成元年以降に作成された公正証書遺言であれば、検索が可能です。
(2)被相続人の身分関係の調査(相続人の調査)
この点は要するに、相続人が何人いて、それぞれの法定相続分はどの程度か、という問題です。依頼者の方がご存じないだけで、実は相続人が他にもいた、というケースは珍しくありません。
万が一法定相続人を除外して遺産分割協議を行った場合、当該遺産分割協議は無効になりますので、相続人の調査は慎重に行う必要があります。
具体的には、被相続人の除籍謄本から始まって、相続人が存在しないかどうか、戸籍謄本を遡っていくことになります。まずは、被相続人の子供がいないかどうかを確認するために、被相続人が10歳くらいの戸籍まで遡っていかなければなりませんし、場合によっては甥や姪が相続人となるケースもありますので、調査の範囲が相当広範囲になることも少なくありません。
また、戸籍の調査と併せて各相続人の現在の住所も確認する必要があるので、戸籍の附票を取得する必要があります。
(3)相続財産の調査
① 不動産
被相続人名義の不動産の所在が明らかな場合には、法務局で当該不動産の登記簿謄本(全部事項証明書)を取得することになります。
もし、被相続人名義の不動産が存在することは明らかだが、どこにあるのか分からない、という場合には、当該不動産が存在すると考えられる市区町村の資産税課に「名寄帳(なよせちょう)」を申請する方法があります。
この名寄帳には、当該市区町村内に存在する同一名義人の不動産(未登記物件を含む)が全て記載されているので、被相続人名義の不動産の有無が確認できるのです。② 預貯金
預貯金に関する具体的資料(通帳等)があれば、当該金融機関に対して相続時の残高証明書を申請することになります。また、生前、あるいは死後に不正に預貯金が引き出された可能性があるのであれば、相続の前後を通じての取引履歴を取得する必要があります。
③ 生命保険等
後出Q&A「生命保険金は相続財産に含まれますか。」で述べるように、生命保険金については遺産に該当するかどうかはケースバイケースです。ただし、仮に遺産に該当せず、特定の相続人が取得するにしても、遺産分割協議に影響を与える可能性がありますので、調査をする必要があります。具体的には、預貯金と同様、各保険会社に対して照会をすることになります。
(4)特別受益、寄与分の調査
相続人の中に被相続人から特別の利益(特別受益)を受けた人がい
る場合、あるいは相続人の寄与(寄与分)によって被相続人の財産が
増加した場合などは、具体的相続分の算定に際して影響があります。
そこで、可能であればその点について調査をすることになりますが、
そのような特別受益や寄与分については、当該特別受益等を受けた本
人以外には事実関係が明らかでないことが多く、事前の調査が困難な
こともあります。
相続権はあります。たとえ離婚調停中であっても、離婚が成立するまでは
配偶者です。そして、相続人かどうかは、相続開始時、すなわち夫の死亡時を基準として決まります。したがって、離婚調停中に配偶者が死亡して
調停が終了しても、相続権は失われません。その後再婚した場合であっても、同様です。
内縁の妻には相続権がありません。相続人として定められている「配偶者」には内縁の妻は含まれないからです。あくまでも、婚姻届を提出している かどうかが基準になります。したがって、内縁の妻に財産を残したいときには、遺言書を書いておく必要があります。
養子になった場合でも、実父母に対する相続権はあります。養子縁組をした場合でも、実親との親子関係がなくなることはないからです。養子は、実の父母と養父母の双方の相続人となります。
ただし、「特別養子」の場合は、実父の相続はできません。この特別養子は、養子縁組後は実の父母及びその血族との親族関係が終了するからです。
孫は、被相続人であるところの祖父の養子であると同時に、亡父の代襲相続人でもあり、両方の地位に基づく相続権を有することになります。
養子である私には配偶者も子もおらず、養親も実親もすでに死亡しております。私が亡くなった時には、養親の子と実親の子が私の兄弟として私の相続人になると思いますが、その際、養親側の兄弟姉妹と実親側の兄弟姉妹は、同じ立場で私を相続することになるのでしょうか。
そのとおりです。法律上、養子は実子と同じですから、養子は養親の子とは兄弟になります。他方、養子縁組をした場合でも実方との親族関係は終了しないので、実親の子とも兄弟のままです。したがって、どちらの兄弟も同じ「兄弟」という立場で相続することになります。
・民法上、原則として、胎児に権利能力(権利の主体となることのできる法律上の資格)は認められていません。しかし、相続については例外的に胎児にも権利能力が認められています。但し、胎児が死亡して生まれた場合には、胎児に相続権は認められません。胎児の段階で遺産分割をすることは可能ですが、出産を待ってから遺産分割協議に入る方がよいでしょう。
・胎児が遺産相続できるとしても、その遺産分割はどのようにするのでしょうか。通常、未成年者が法律上の判断をする場合には、親権者が法定代理人(民法の規定によって定められた代理人)となるのですが、相続の場合には、親権者である母親または父親は、遺産相続においては胎児と共同相続人となり、胎児と利害対立する可能性が高いものです。したがって、そのような場合には、家庭裁判所が胎児のために、「特別代理人」を選任して、この特別代理人が胎児のために遺産分割協議に参加することになります。
連れ子が法定相続人たる「子」に当たるかどうかが問題となります。この場合の「子」というのは、実子・養子などの事情によって影響されることはありませんが、被相続人とは法律上の親子関係にあることが必要です。
したがって、その連れ子が被相続人と養子縁組をしていた場合には、法律上の親子関係があるので相続人となることができますが、単にいわゆる継親子の間柄にすぎなかった場合には、相続権はないということになります。
愛人の子が、法定相続人たる「子」に当たるかどうかという問題です。相続人たる「子」といえるためには、被相続人と法律上の親子関係にあることが必要です。したがって、本問の場合でいえば、その子が被相続人と養子縁組をしているか、または被相続人によって認知されているかしていなければなりません。このような措置がとられていない場合には、相続権はありません。ただ、認知は父親が死亡した後においても、その死亡の日から3年以内であれば、請求することができるので、検察官を相手方として、認知の訴えを提起することができます。
遺言書を作成して、兄に一切の財産を相続させないことが考えられます。しかし、それでも、遺留分があるために、兄に一切の財産を渡さないということは難しいものです。
ただし、兄の非行の程度が相当なものである場合には、相続人からの廃除が認められる可能性はあります。相続人の廃除は、以下の場合に認められます。
① 被相続人に対して虐待をしたり、重大な侮辱を加えたとき② 相続人が著しい非行を犯したとき
しかし、現実的には、相続人の廃除を認めてもらうことは難しいのが実情のようです。
調査しても相続人の存在が分からない場合、相続財産は法人となります。家庭裁判所から選任された相続財産管理人により相続人の捜索、被相続人の債務の清算手続きを行い、余りがあれば特別縁故者へ分与する手続きを
経て、残りは最終的に国庫へ帰属することになります。
※ 特別縁故者とは、被相続人と生計を同じくしていた者、被相続人の療養看護に努めた者などであって、被相続人の内縁の妻、事実上の養子などがその例です。
遺産分割は、一つの相続ごとに判断するので、別の相続の事情は考慮されません。
香典は相続財産に入りません。香典は、一般的には、葬式費用にあてられるべきもので、遺族の負担を軽くするという相互扶助の精神に基づく金銭の贈与だとみられております。したがって、香典の受取人も、常識的には喪主と考えるべきです。
保険金の受取人が誰になっているかで異なります。
被相続人自身が受取人になっている場合 → 相続財産に含まれます。
相続人の誰かが受取人になっている場合 → 相続財産に含まれません。
受取人を単に「法定相続人」と指定している場合 → 相続財産に含まれません。が、受取人が複数になったときは、法定相続分に従って分配します。
①生命保険の受取人が「特定の相続人」に指定されている場合は、その相続人の固有の財産となるので、死亡保険金を受け取ることができます。
②生命保険の受取人が「契約者本人」に指定されている場合は、生命保険は亡くなった人の財産として扱われるため、相続放棄をすると保険金の受け取りがで
きなくなります。
相続放棄をしても、遺族年金は受け取ることができます。相続放棄によって受け取ることができなくなるのは、あくまで亡くなった方が所有していた財産です。遺族年金は、亡くなった方の遺族を支えるために遺族の方に対して支給されるものであって、亡くなった方に支給されるものではありません。つまり、遺族年金は遺産ではないということです。そのため、亡くなった方の遺産を相続放棄しても、遺産ではない遺族年金は受け取れるということになります
A 住宅ローンを団信で完済されたときは、次の4つの手続きが必要となります。
・団信保険金について → 保険金の請求手続き
・返済の口座について → 預貯金の相続手続き
・自宅不動産について → 所有者の名義変更
・住宅ローンについて → 抵当権の抹消登記
上記の4つの手続きは、おおよそ次の手順で行います
相続財産に含まれないことが多いでしょう。死亡退職金の受給権者については、通常、法律、条例または退職金規程といった内規により定められており、その内容等によって考え方が異なってきます。もし、死亡退職金の受給権者の定め方等からみて、死亡退職金が遺族固有の権利であると評価される場合は、その死亡退職金は、受給権者固有の権利として相続財産には含まれません。
あなたと弟が、それぞれ2分の1の割合で共有する、ということになります。相続の際、遺言がなければ、遺産は共同相続人間の共有になるのが原則です。したがって、株式については、株主権として、相続人間で「準共有」することになります。そのため、遺産分割協議で別途定めを行った場合を除き、相続人の2人で2,000株を共有することになります。
※ 準共有とは、数人で所有権以外の財産権を有する場合をいいます。
1 使い込みがあったかどうか明らかでない場合
被相続人の預金口座の取引履歴を取り寄せて、不明朗な支出がないかを調べます。それでもはっきりしない場合は、遺産分割においては使い込みはないものとして扱うことになります。
2 使い込みが判明した場合
⑴ 相続開始前の場合
被相続人に贈与の意思があったかどうかが問題となります。贈与の意思があったといえる場合には、特別受益の問題が生じるからです。
① 特別受益といえる場合は、原則として遺産への持ち戻しをすることになります。
② 特別受益といえない場合は、被相続人が使い込みをした相続人に対して有する損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を、相続人が相続することになるので、それを行使することになります。
⑵ 相続開始後の場合
① 相続人が無断での使い込みを認めた場合は、遺産を先取りしたとの前提にて話し合いをします。
この点については、民法の改正により、遺産を使い込み等の処分をした相続人以外の相続人が処分された遺産を遺産に組み込むことに同意した場合は、処分された遺産が遺産分割時に存在しているとの前提で遺産分割を行うことができるようになりました(906条の2)。
② 話し合いで解決できない場合、あるいは、相続人が無断での使い込みを認めない場合は、不法行為に基づく損害賠償請求訴訟、不当利得返還請求訴訟、遺産確認請求訴訟で争うことになります。
※ 不当利得返還請求とは、法律上の正当な理由もなく利益を得て、他人に損失を及ぼした者から不正に取得した利益(金銭など)を返還してもらうように請求することです。
明け渡す必要はありません。当該家屋の契約上、借家権が相続人に受け継がれない等の特段の取り決めがない限り、借家人が死亡した場合、借家契約は従来どおりの内容のまま、借家人の相続人に当然に引き継がれます。
このことは、相続人であるあなたが、それまで借家に居住していたかどうかにかかわりません。したがって、明渡しに応じる必要はありませんし、借家権の承継に当たって家主の承諾は不要ですから、家主の承諾と引き換えに名義書換料等を請求されても、支払う必要はありません。
・借地権も遺産分割の対象となります。借地権とは、土地利用権の中でも賃借権と地上権のことを指しますが、いずれにしても、借主の死亡により借地権が消滅するものではなく、当然に相続の対象となります。
・そして、相続人は被相続人の地位をそのまま承継することになりますから、借地権を第三者へ譲渡するような場合と異なり、貸主の承諾は必要ありません。
・したがって、本問でも、建物だけでなく、借地権も相続財産に含まれますので、遺産分割の対象となり、遺産分割協議がまとまるまでは借地権もとりあえず共同相続人の共有財産(準共有)となります。
※ 準共有とは、数人で所有権以外の財産権を有する場合をいいます。
・ 借地権の遺産分割の方法ですが、現物分割は、一般的には難しいと思われますので、換価分割または代償分割の方法がよいでしょう。
具体的には、以下の方法が考えられます。
① 地主との話し合いで、借地権付建物を買い上げてもらい、その代金を相続人間で分ける。
② 地主が建物の買上げに応じない場合には、地主の承諾を得て建物と借地権を第三者に売却する。この場合、通常、地主への相応の承諾料が必要となります。
③ 借地契約の期間満了を待って、建物買取請求権を行使する。
④ 相続人の中にその建物を利用しようとする者がいる場合には、その者が、建物と借地権の全部を現物で取得し、自己の法定相続分を超える部分の価額に見合うだけの金銭を他の相続人に代償金として支払う。
・被担保債務が、被相続人名義で借り入れられたものである場合には、相続の開始によって、債務は当然に法定相続分で分割された割合で各相続人に帰属します。仮に、相続人間で特定の相続人のみに債務を負担させる旨の合意がなされても、これを債権者に主張することはできません。
・しかし、抵当権が設定されている不動産を、法定相続分に応じて分割された割合で各相続人に帰属する、などとする必要はありません。
・遺産分割を行う際、いったん抵当権の存在を無視して分割方法を決めても構いません。後日、債権者が抵当権を実行してきた場合には、抵当権の付いた不動産を遺産分割によって取得していた相続人が、自己の負担で他の相続人が支払うべき債務の返済をしたのと同じことになりますので、他の相続人が法定相続分にしたがって負担すべき割合について、それぞれ支払いを求める(求償)という形で処理すればよいでしょう。
・また、相続人のうちのある相続人が被担保債務を全額債権者に支払う代わりに抵当権付きの不動産を取得することを取り決め、当該不動産の評価額から債務額を控除して分割方法を定めることも考えられます。この場合には、他の共同相続人が債権者から自己の相続分に相当する債務の支払いを請求された場合、その支払いをしなければならないものの、相続人内部では抵当権付の不動産を取得した相続人に求償できることになります。
銀行の行う住宅ローンの場合、基本的に、ローン契約締結と同時に団体信用生命保険(通称「団信」)に加入することになっています。
ですから、ローンの借主が死亡すると、その融資銀行は、この保険契約に基づいて死亡時点におけるローンの融資残金に見合う金額を、保険会社から受け取り、これによって融資金を決済することになります。
したがって、その自宅に設定された抵当権を実行され、自宅が競売されることがないことはもちろん、事後のローンの返済もしないで、ずっとそこに居住できることになります。
ご主人が他人の連帯保証人となったまま死亡した場合、基本的に相続人のあなたとご長男が連帯保証人としての地位を相続します。「連帯保証人としての地位を相続する」とは、あなたとご長男が知人の連帯保証人としての責任を負うということです。本問の場合、相続人はあなたとご長男の2人なので、それぞれ2分の1、すなわち250万円ずつの連帯保証債務を負い、法律上250万円ずつの返済義務を負うことになります。
今からでも相続放棄をすることができると思われます。民法915条は、「相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。」と規定しています。
通常は、被相続人が亡くなれば、そのことはすぐに相続人が知るでしょうから、財産状況を調べてマイナスの財産の方が多ければ、死亡のときから3ヶ月以内に相続放棄をすることになります。
しかし、本問のように被相続人が消息不明である場合は、「相続の開始」する原因である死亡の事実自体を知らないわけですから、この3ヶ月の期間の起算点は、被相続人である父親が死亡したときではなく、「父親が死亡したことを知ったとき」になります。
また、亡くなったこと自体を知ってから3ヶ月以上が経過していても、3ヶ月以内に相続放棄の申述をしなかったことについて、相当の理由がないと明らかに判断できるような場合でなければ、相続放棄が認められることがあります。
共同相続人のうち未成年者があるときは、親権者が未成年者に代わって遺産分割協議をすることになるのですが、本問のように親権者自身も共同相続人である場合は別です。この場合は、親権者とその子供と利益が相反するので、家庭裁判所に申し立てて、子供のために特別代理人を選任してもらい、その特別代理人が未成年者に代わって分割協議に加わることになります。
・行方不明になってから7年たっていれば、相続人が家庭裁判所に失踪宣告の申し立てをするのがよいでしょう。失踪宣告がなされると、普通の場合、行方不明になった時から7年たった時に死亡したものとみなされます。
・行方不明になってからまだ7年にならないときや、行方不明者を死亡扱いにしてしまうに忍びない場合には、相続人が家庭裁判所に申し立てて、不在者財産管理人を選任してもらい、その管理人を参加させて分割協議を行うことになります。
遺産分割協議は、相続人全員の参加が必要です。しかし、相続人の中に認知症など、精神上の障害のため、常に物事の是非を判断する能力を欠く方がいる場合、これらの方には意思能力がないため、遺産分割協議を進めることができなくなってしまいます。そこで、このような方については、家庭裁判所に後見開始審判の申立てを行い、成年後見人を選任してもらう必要があります。その後、成年後見人が成年被後見人(意思能力がなく、後見してもらう人)を代理して遺産分割協議に参加し、協議がまとまれば、それに基づいて遺産である不動産の名義変更や預貯金の払い戻しが可能となります。なお、成年後見人は成年被後見人にとって不利な内容の協議をすることはできません。
※ 意思能力とは、行為の結果を理解するに足りるだけの精神的能力のことです。大体7~10歳程度の精神的能力といわれています。
海外居住者である二男との遺産分割協議を行うことができます。ただし、相続人全員が日本にいる場合よりも慎重に手続きを進めるように心がけてください。
・領事館で「サイン証明書」を取得
遺産分割協議書には、相続人全員の署名と、実印での押印が必要となりますので、印鑑証明書を添付することになります。しかし、二男は日本に住民票がないので、印鑑証明書を添付することができません。印鑑証明書がなければ、押印が実印によるものと証明できませんから、相続登記や銀行手続きができません。したがって、海外に住んでいる二男は、日本領事館に出向いて、印鑑証明書の代わりになる「サイン証明書」を取得する必要があります。サイン証明書は、遺産分割協議書を領事館に持参し、係官の前でサインをすることで発行してもらえます。
・領事館で「在留証明書」を取得
海外に居住していて日本に住民票がないという場合、サイン証明書と同様に、現地の日本領事館で、住民票の代わりになる「在留証明書」を取得することになります。
・この書類は、一般に「相続分のないことの証明書」とか「特別受益証明書」といわれています。
・この証明書を使えば、財産のほとんどまたは全部を共同相続人の1人に帰属させ、他の共同相続人はまったく、またはほとんど何も相続しないことにして相続登記を済ませ、あたかも遺産分割が完了したような結果とすることができます。
・要するに、この証明書に署名・押印しますと、家庭裁判所へ申述して行う正式の相続放棄の手続きを経ることなくそれと同じ効果が生じ、遺産分割協議の便法として相続人の1人に遺産を集中させることができるのです。
・しかし、この証明書は、ほとんどの場合、その内容が真実に反することから後日争いの種になりますので、証明書の利用には慎重を期すべきです。
・しかも、本来の相続放棄ではありませんので、被相続人に債務(借金)があった場合、債権者から追及を受ける恐れがあります。したがって、債務は絶対に負いたくないのであれば、家庭裁判所で相続放棄の手続きをすべきです。
① 第一に、相続放棄です。相続の開始後、長男を除く他の共同相続人が、相続の開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所に相続の放棄を申述すると、全財産が長男のものになります。
② 第二に、遺産分割により全財産を長男に帰属させることができます。相続の開始後、長男を除く他の共同相続人の取得分をゼロとする遺産分割の協議をして、全財産を長男に取得させることができます。
③ 第三に、特別受益証明書を利用することです。これは、長男を除く他の共同相続人はすでに特別受益を受けているので、相続開始に際して相続分が皆無であることを認める書面のことで、これを利用すると、結果的に長男が全財産を相続することになります。
④ 第四に、遺言、死因贈与などがあります。被相続人自身が生前に長男に全財産を継がせる方法として、以下のものがあります。
ⅰ 遺贈……遺言により全財産を長男に承継させること(遺贈)が可能です。
ⅱ 死因贈与……遺贈と同様のことを被相続人は、生前の契約で行うことができます。被相続人と長男との間で、被相続人の死亡によって効果が発生する贈与契約をすることができます。
このような場合、相続により、買主の相続人が買主となりますので、売主から相続人へ移転登記をすることが可能です。ただし、売主が相続人への移転登記を拒否した場合、買主の相続人が自分名義の登記をするには、裁判で所有権移転登記請求をした上で、登記を移転する手続きをとります。
登記を放置しておくと、長年の経過により第三者に所有権が移転される恐れもありますので、なるべく早く手続きをすることが望ましいでしょう。
・ まず、昭和10年の相続については旧民法が適用されます。旧民法によれば、戸主であったあなたの祖父の財産は、法定された家督相続人が単独で相続します。あなたの父は祖父の長男でしたから、第1順位の家督相続人として、昭和10年に祖父の土地を取得していることになります。
・ 次に、あなたの父からあなたへの相続については、相続人があなた1人かどうかによります。相続人があなただけの場合、あなたが単独で相続します。あなた以外にも相続人がいる場合には、相続人全員で協議してあなたが相続する旨の合意をし、遺産分割協議書を作成する必要があります。
※ 家督相続とは、民法旧規定で、戸主(家の長)が死亡・隠居などをした際、1人の相続人が戸主の身分・財産を相続することをいいます。
遺産のマンションに、配偶者が居住している場合には、その配偶者には「配偶者短期居住権」(民法第1037条1項本文)という権利があります。
配偶者短期居住権とは、残された配偶者が、亡くなった人の所有する建物に居住していた場合、遺産分割協議がまとまるまでか、協議が早くまとまった場合でも被相続人が亡くなってから6か月間は無償で建物に住み続けることができる権利のことです。
なお、居住建物の取得者は、いつでも配偶者短期居住権を消滅させるよう申し入れすることができますが、その場合であっても、残された配偶者は申し入れを受けた日から6か月間は無償で建物に住み続けることができます(民法第1037条3項、1項2号)。
そのため、この配偶者短期居住権の期間内は、被相続人の後妻に立ち退いてもらうことはできません
・まず、他の相続人の1人から、債務不履行を理由に解除ができるかについては、一般的にできないと考えられています。一度決まった遺産分割協議を相続人のうちの1人から一方的に解除できるとすると、さらに他の相続人にも影響を与え、法的安定性を著しく害するからです。
・しかし、成立した遺産分割協議を、合意によって解除し、再度協議して新たな遺産分割協議を成立させることは可能です。この場合には、全員の合意がありますので、法的安定性を害することは相続人間ではありません。
遺産分割を終了して、相続人全員が実印を押した分割協議書を作成したのですが、1人の者が、やっぱり嫌だと言って、印鑑証明書をくれないために、不動産の名義変更ができません。遺産分割をやり直すしかないのでしょうか。
この場合、遺産分割自体は、実印まで押印しているのですから、合意に達してきちんと成立しています。ただ、登記申請の際には印鑑証明書が要求されますので、1人でも印鑑証明書を出さないと登記を受け付けてくれません。しかしながら、この場合、遺産分割をやり直す必要はありません。
既に作成された遺産分割協議書について、きちんと有効に作成されたものであることを裁判所に認めてもらい、その判決を添付すれば、登記ができます。この裁判のことを「書証真否確認の訴え」といいます。
本問のように、ある人の死亡により相続が開始したものの、その遺産相続の手続きをしないうちに、さらにその相続人が亡くなり次の相続が開始してしまっている状態を相次(数次)相続といいます。
・この場合、まず、一次相続であるお父様の遺産分割協議を先に行い、お母様の相続する遺産を確定させます。その上で、次に、二次相続であるお母様の遺産分割協議を行うことになります。その際、お父様の相続とお母様の相続の遺産分割協議を1通の遺産分割協議書で作成(誰が被相続人であるのか、また、誰の相続人として協議に参加するのかが分かるように記載)してしまう方法もありますが、別々に作成した方が分かりやすいでしょう。
・相続税の申告は、一次相続と二次相続を別々に行います。本問のように立て続けに相続があった場合は、長期間相続がなかった場合よりも相続人の相続税の負担が重くなってしまう恐れがあります。そこで、このような場合における相続人の相続税の負担を軽減するために相次相続控除制度というものが設けられています。具体的には、被相続人の相続(二次相続)開始前10年以内に開始した相続(一次相続)において被相続人が財産を取得したことがあるときは、その被相続人が一次相続により課せられた相続税額に一定の割合を乗じて算出した金額を二次相続に係る相続税額から控除できるというものです。本問では、この相次相続控除制度が適用され相続税が軽減されるものと思われます。
不動産や預貯金等の通常の相続手続きの他、個人事業主の死亡に伴う手続きがあります。
①準確定申告…死亡したことを知った日の翌日から4ヶ月以内
②廃業届…死亡から1ヶ月以内
③取引先に対する売掛金、未納品、未払金等がある場合は、それらの清算。
④従業員を雇用していた場合は、給与の支払いや退職に伴う手続き。
遺産分割協議は相続人全員の合意で行うことから、1人でも反対すれば遺産分割協議は成立しません。このような場合、家庭裁判所に調停を申し立 てて解決してもらうという方法があります。調停は、当事者の意見や希望などを十分に聞き、互いの譲歩を前提にして話し合いによる合意をめざす手続きです。合意ができたときには、調停調書を作成し、これによって不動産の所有権移転登記手続きなどを行うことができます。調停で合意ができなかった場合には、調停は不成立となり、審判手続きに移行します。審判は、話し合いではなく、裁判所の判断により分割をするもので、実質的には裁判の一種といえます。
記載されません。かつて禁治産、準禁治産の制度の時代には、本人の戸籍に、禁治産者、準禁治産者となったことが記載されましたが、戸籍に記載されることについては、本人や家族の抵抗感があり、そのため、禁治産や準禁治産宣告の利用をちゅうちょさせる要因となっていました。そこで戸籍の記載に代えて成年後見登記制度が創設されました。
次の4点に注意してください。