② 共有状態の短所
ⅰ 共有物の変更、処分には、他の共有者全員の同意が必要です。共有にすることは何も解決したことにならないと言えるでしょう。問題を先送りにするだけではなく、さらに状況を悪化させることになりかねません。
持分では処分はまずできません。持分を買う他人は普通いないからです。また、兄弟の共有物を単独所有にする場合、持分を引き取って欲しいという際に兄弟喧嘩の元になります。一番の問題は、問題を先送りにする間に相続が発生して、より状況が複雑化することです。
配偶者居住権とは、建物所有者である配偶者の死亡時において、その建物に住んでいるもう一方の配偶者の居住権(自宅に住み続けることができる権利)を保護するための制度です。「配偶者居住権」と「配偶者短期居住権」が あります。
配偶者が相続開始時に居住していた被相続人所有の建物を対象として、 原則として配偶者の終身期間、無償で建物の使用・収益を認めることを内容とする権利です。
配偶者居住権が認められるための要件は、㋐被相続人所有の建物に、
㋑相続開始時に、㋒居住していたこと、です。
これら㋐ないし㋒の要件が満たされた上で、遺産分割協議、遺贈、死因贈与契約、審判のいずれかによって、配偶者居住権を取得することができます。
② 配偶者短期居住権
相続開始時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には、一 定の期間、居住建物を無償で使用できる権利を取得するものです。
存続期間は、配偶者を含む共同相続人間で遺産分割をする場合は、遺産分割により「建物の取得者が決まった日」、又は、「相続開始の日から6ヶ月経過する日」のいずれか「遅い日」までの間。
それ以外の場合は、建物取得者による「配偶者短期居住権の消滅の申し入れの日から6ヶ月を経過する日」までの間となります。
各相続人は、預貯金のうち、口座ごとに以下の計算式で求められる額については、家庭裁判所の判断を経ずに、金融機関から単独で払戻しを受けることができます。
ただし、同一の金融機関(同一の金融機関の複数の支店に預貯金がある場合はその全支店)からの払戻しは150万円が上限になります。
単独で払戻しができる額
=(相続開始時の預貯金額(口座基準))×1/3×(払戻しを行う相続人の法
定相続分)
② 家庭裁判所の判断により払戻しができる制度
家庭裁判所に遺産分割の審判や調停が申し立てられている場合に、各相続人は、家庭裁判所へ申し立ててその審判を得ることにより、預貯金の全部または一部を仮に取得し、金融機関から単独で払戻しを受けることができます。
ただし、生活費の支弁等の事情により預貯金の仮払いの必要性が認められ、かつ、他の共同相続人の利益を害しない場合に限られます。
単独で払戻しができる額
=(家庭裁判所が仮取得を認めた金額)
相続人全員が集まって一度の機会に書面を作成、署名・捺印をする方法でも、 誰かが予め案を作り持ち回りで他の相続人がそれに署名・捺印する方法のいずれでも、 相続人全員が記載内容を承認して署名・捺印すれば、遺産分割協議は成立します。
② 住所は正確に書くこと
住所の記載は、印鑑証明書に記載されている住所を正確に記載します。
印鑑は必ず実印を使います。実印を使わなければ、不動産登記や銀行の手続きができません。
なお、厳密にいえば、署名ではなく記名でもよいのですが、後日のトラブルを防ぐためにも署名をしてください。
④ 印鑑証明書の添付
遺産分割協議書には、実印の押印が必要ですが、実印は印鑑証明書と
一体となって初めて実印としての意味を持ちますので、印鑑証明書を
添付します。
遺産分割協議書が用紙数枚にわたる場合、相続人全員の実印で割り印します。
① 相続財産が預貯金又は金融商品だけの場合
この場合は分割可能であるから、疎遠な相続人に法定相続分の金銭を分割してあげれば、揉めることはないでしょう。
万一、疎遠な相続人が「その住宅を売却して代金を分割してほしい。」などと言ってきたら厄介です。
相続財産に不動産がある場合は、このようなリスクを踏まえた上で対応する必要があります。
対応策としては、代償分割の方法、相続財産のうち預貯金を多めに与える方法があります。
調停手続きは、第三者である調停委員が当事者(申立人・相手方)の話し合いの仲介に入ってくれる手続きです。原則として当事者が出席しなければなりませんが、当事者の待合室は別々で、それぞれの主張も別々に聞いてもらえます。
調停委員は、当事者の間に入って調整のための便宜を図ってくれ、遺産分割協議が円満に行われ、また妥当な結論となるように話し合いの方向性を示したり、アドバイスを行ってくれます。
② 遺産分割の審判
調停で話し合いがまとまらない場合には調停は不調となり、審判手続きに移行します。
審判の手続きは、訴訟手続きに近い形で行われます。必要に応じて事実関係を審判官が尋ねることもあります。審判では審判官が、相続財産の種類や性質、各相続人の生活事情等を考慮した上で、相続分に応じた妥当な分割方法を定め、審判を下します。その内容にしたがって遺産の分割を行うことになります。